日本化学会 第83春季年会(2003)【市民公開講座】

「脳と健康の化学」

主 催 日本化学会
後 援 国立科学博物館・新宿区教育委員会・早稲田大学
日 時 3月21日(金)9:55〜16:45
会 場 早稲田大学 西早稲田キャンパス(東京都新宿区西早稲田)
    14号館101教室 (S4会場)
参加費 無料
参加方法 当日直接会場にお越し下さい。定員300名
問合せ先 (社)日本化学会企画部 第83春季年会係
     〒101−8307 千代田区神田駿河台1−5
     TEL:03-3292-6163 FAX:03-3292-6318
     E-MAIL:nenkai-help@chemistry.or.jp
     
プログラム

10:00〜10:45 脳の老化とアルツハイマー病発症について
(理研脳科学総合研究センター)高島 明彦

10:45〜11:30 コスメティックと健康
(資生堂メイキャップ製品開発センター)福井 寛

11:30〜12:15 水産食品と予防医学
(東京水産大学大学院水産学研究科)矢澤 一良

13:30〜14:30 ナノテクノロジーによるヒューマン・ボディー・ビルディング
(大阪大学産業科学研究所)川合 知二

14:30〜15:15 血液の流れと健康
(食品総合研究所)菊池 佑二

15:15〜16:00 大腸は健康の発信源  見えてきた! 大腸内細菌叢の全貌 -
(理研微生物機能分析室)辨野 義己

16:00〜16:45 空気マイナスイオンの生体に及ぼす影響〜研究の歴史と展望〜
(東京都立大学大学院理学研究科)琉子 友男


【講座概要】
 人口の高齢化が進んでいますが、元気に長く生きることが望まれます。市民の方々の健康に対する関心は常に高く、化学会の市民講座でもなんどか脳や健康について取り上げられています。今回の市民講座では、午前中は脳の老化とアルツハイマー病についてお話しいただいたあと、香りや食物などが脳に与える影響と健康の維持に対する役割(アロマテラピー、知的食生活)などをお話しいただきます。午後は、ナノテクノロジーや分子生物学の新しい技術が健康や医療の場でどのように活用されているかを、人体調和型材料や血液サラサラモニタ、腸内細菌、マイナスイオンなど、最近マスコミでも取り上げられている話題を中心にお話しいただきます。

4S5-01 脳の老化とアルツハイマー病発症について
(理研脳科学総合研究センター)高島 明彦

 アルツハイマー病の最も確かな危険因子は加齢です。高齢になればなるほどアルツハイマー病の罹患率は上昇します。 高齢化社会においてアルツハイマー病の予防や治療技術の早急な確立が望まれています。神経原線維変化と呼ばれる構造物の出現が脳の老化と関係することが解ってきました。この講演では我々が確立した脳の老化を示すマウスを用いた最近の研究成果と脳の老化とアルツハイマー病発症について解説します。

4S5-02 コスメティックスと健康
(資生堂メイキャップ製品開発センター)福井 寛

 化粧品は薬剤や保湿剤で肌をすこやかにさせる生理作用ばかりではなく、感覚による生理的・心理的作用をもうまく利用している。自分の世話ができなくなった高齢者が化粧することによって自立できるようになることはよく知られている。また、香りによる鎮静または高揚作用で気分をうまくコントロールするばかりではなく、香りによるストレス緩和で肌荒れの回復を促進したりすることができる。化粧品におけるトピックスを分かりやすく説明する。

4S5-03 水産食品と予防医学
(東京水産大学大学院水産学研究科)矢澤 一良

 超高齢化社会を迎えて、"自分の健康は自分で守る"という「セルフメディケーション」を真剣に考えなくてはならない時代となって来た。医薬品に頼るのではなく、食品による生活習慣病予防(知的食生活)が必要であることは明らかである。具体的な方法として水産食品の摂取を増やすことを挙げることが出来る。本セミナーでは、身体・脳・心の健康を維持する具体的な方法と、その科学的根拠・安全性・作用メカニズムについて概説する予定である。

4S5-04 ナノテクノロジーによるヒューマン・ボディー・ビルディング
(大阪大学産業科学研究所)川合 知二

 人間の体はDNAのプログラムにもとづき、ナノメートルの部品が巧妙に組み上げられて作られている。本講演では、ボトムアップのナノテクノロジーによるヒューマンボデイービルデイング(人体調和型材料・部品・素子・システムの創成)の現状と将来展望を述べる。

4S5-05 血液の流れと健康
(食品総合研究所)菊池 佑二

 リソグラフィーの技術を用いてシリコン単結晶基板に毛細血管モデルを加工し、血液の流れを直接モニタで観測できる装置、血液サラサラモニタを発明した。これを用いると、血液のサラサラ状態のほか、赤血球の変形能、白血球の活性度、血小板の凝集度などが明らかになるので、健康診断や健康食品・医薬など研究開発などで活躍している。この装置を用いて明らかとなった事実から健康について考えてみたい。

4S5-06 大腸は健康の発信源  見えてきた! 大腸内細菌叢の全貌 -
(理研微生物機能分析室)辨野 義己

私達の大腸内には、菌数にして糞便1グラムあたり約1兆個にも達し、種類にして500種以上もの細菌が棲みついています。そして分子生物学的手法を用いて培養困難とされてきた大多数の大腸内細菌の全貌がみえてきました。大多数の腸内細菌が棲む場である大腸はヒトの臓器の中で最も病気の種類が多い臓器であり、腸内細菌によって生成された有害物質がさまざまな病気の原因となっているのです。からだの健康状態は、糞便性状や排便状態などに反映されています。病気の発信源である大腸を健康な状態に保つことが、とりもなおさず将来、健康で生きていくために大切です。

4S5-07 空気マイナスイオンの生体に及ぼす影響〜研究の歴史と展望〜
(東京都立大学大学院理学研究科)琉子 友男

 マイナスイオンの生体に及ぼす影響に関する研究は多いが、未解明な部分も多いのが現状である。特に作用機序に関しては混沌としている。本講演では、われわれが今日まで行ってきた研究に加え、主に欧米諸国で発表された研究を概説する。さらに、われわれが現在考えている作用機序と過去に発表された仮説についても言及する予定である。